京城記憶合金
北に触れたら南にも触れんわけにはいくまい。
買っておいたDVDを観る。
「惑星Xから来た男」
新聞記者のジョンは、戦地で友人となったエリオット博士から、特ダネを提供するから来てほしいという連絡を受け、イギリスのバリー島に上陸する。
島にある城砦に滞在している博士は、少し前に突如現れた謎の天体・惑星Xが間もなく地球に最接近し、その時地球上でもっとも惑星Xに近付く場所がこのバリー島なのだと説明する。
その夜、島の宿屋までジョンを送って行った博士の娘イーニドは、謎の物体を発見し、その中に乗組員らしい不気味な顔を見る。
翌日、ジョンと博士もその謎の生命体と遭遇する。
博士はそれを惑星Xから来た宇宙人と考えるが、言葉が通じず、コミュニケーションが取れない。
博士の教え子であるミラードが、幾何学を用いてコミュニケーションすることを思いつくが、ミラードは惑星X人とコミュニケーションするうちに、彼から得た知識で地球を支配するという野心に囚われ、惑星X人をおのれの意のままにしようと襲いかかってしまう。
これをきっかけに、惑星X人は態度を変え、ミラードや博士やイニード、島民たちを催眠にかけて誘拐し、彼らを誘導して、宇宙船の周囲に土塁を築き始める。
ジョンたちからの救援要請に応じて軍が到着するが、彼らは惑星Xの再接近が今夜だと知ると、何が起こるかわからないので、その前に攻撃すると主張、それでは誘拐された人々が犠牲になるというジョンに対して、深夜11時に攻撃を開始するので、それまでに救出せよ、と命じる。
ジョンはなんとかその任務を果たし、軍は予定通り11時に攻撃を開始、宇宙船もろとも惑星X人は爆破されてしまう。
その瞬間、惑星Xは地球に最接近し、そして遠ざかってゆくのであった。
1951年の作品である。
この惑星X人は、いきなり攻撃してくるような野蛮な奴ではなく、比較的友好的ではあるのだが、最後までその真意ははっきりとはしない。
唯一惑星X人とコミュニケーションをとることのできたミラードの口から、惑星X人は、自分たちの星が凍土化してしまったため地球を侵略しようとしている、とは語られるが、はっきりとした侵略行動はとらないし、それが本当かどうかも分からない。
特殊な電波か何かで、人間を催眠にかけて意に従わせることはするが、特に人間を殺しはしない。
逆に、地球の大気が体に合わないのか、常に宇宙服を着ているのだが、そのヘルメットについている気体を送るホースのコックをひねられるだけで気絶してしまうような、弱い奴だ。
いや、窒息すれば誰でもそうなるか(苦笑)
映画自体、ミラードが変な野心を持たなければ、普通にコミュニケーションをとって、穏便に事態は推移したかもしれない、という含みを最後まで持たせている。
惑星X人の側からすると、自分たちが移住可能か調査しに来ただけなのに、自分たちの科学力に目のくらんだ男に襲われ、自衛のために土塁を築いていたら、攻撃を受けてしまった、という話と受け取ることも可能で、コミュニケーションが成立しないということの悲劇とも解釈できる。
そう言えば、大学生の頃に読んだジョー・ホールドマンのヒューゴー・ネビュラ両賞受賞作「終わりなき戦い」も、人類と宇宙人の間にコミュニケーションが成立しなかったがために1143年間も戦争し続ける、という話だったな。
人類と宇宙人の間にコミュニケーションが成立せず、事態が悪化するという展開は「未知との遭遇」のオルガンで簡単にコミュニケーションできてしまうのよりは、ずっとリアリティがあるように思う。
いや、あれも、コミュニケーションになっているのかどうか、疑わしいものだが。
DVDのパッケージには、惑星X人の顔はアジア系で、当時のアメリカの社会性を表していると書いている。
私自身はあまりアジア系という印象は受けなかったが、確かにツリ目だし、どこか製作者にそういう気持ちはあったのかもしれない。
日本との戦争が終ってまだ6年目だし、朝鮮戦争の最中だし。
だとすれば、何を考えているのか分からないからやっちまえ、という乱暴さは、いかにもアメリカ的(いや、攻撃するのはイギリス軍だけど)と言えるのかも知れない。
なんにせよ、いささか釈然としない思いは残る作品である。
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