アサダマオー
種牡馬は、あの名馬ハツシバオー。
傑作すぎる絵葉書を手に入れてしまった。
一人だけで楽しむのはもったいないので、ご紹介したい。

ある古書店の目録で「民衆の鉄道 民衆よ愛せ」というタイトルの絵葉書を見つけた。
発行は朝鮮総督府鉄道局だという。
あいにく掲載されていたのが図版ページではないので中身はわからない。
わからないが、日本の朝鮮総督府が朝鮮半島に敷設した鉄道をPRしたものだろうと思い、買ってみることにした。
いきなりの1枚目がこれだった。
「乗るは極楽歩めば地獄」
なんですか?

2枚目を見ると、鉄道の絵の中に、標語らしい言葉が3種類書かれている。
「人畜は公道を 汽車のみ鉄路」
「人に迷惑吾が身に危険 線路通行止めませう」
「急がば廻れ此所は危険いけがの途」
どうやら、これは鉄道をPRすると言っても、鉄道敷設の偉業を誇示するというようなものではなく、鉄道の安全運行のためのPRが目的のものらしい。
それも、朝鮮人民に対して、危険なので線路内に立ち入らないようにと啓蒙しようというもののようだ。
「踏切では一旦止まり注意して渡られたし」
「先づ止れ踏切の前」
「人に迷惑我身に危険線路通行止めませう」
「一日の線路通行者は五五一九〇人で一年間の死傷者は三九〇人であります」
線路通行者が55190人というのは、どう調査したものかわからないが、線路通行中の死傷者が390人というのは、確かに多い。
4枚目には、もうひとつの側面が記されている。

「踏切では御行儀よく汽車の通過を御待ち下さい」
「待つは一時急ぐは危険」
「人畜は公道を汽車のみ鉄路」
「一ヶ年の轢殺傷二五五頭」
単位が≪頭≫ということは、葉書の写真にあるように、牛などの家畜のことだろう。
これまた随分な数である。
しかも、牛なら、轢いた列車の方にも何らかの損害を与えたかもしれない。
総督府鉄道局が、こんな絵葉書を製作した気持ちも、分かるというものだ。
しかし、最後の5枚目を見て、私は爆笑してしまった。

「線路枕に涼みの仮寝明けりゃ妻子の涙雨」
「皆さんどうか安全な所へ御連れ下さい」
「線路に仮睡死亡者は一ヶ年七八人」
なんじゃこりゃ!
これはマジかいな?
写真の滑稽さに爆笑してしまったが、しかし、と考え込んだ。
いくら朝鮮が近代化に立ち遅れたとは言え、そこまで鉄道を理解できないものだろうか。
まあ、線路を道代りにして事故に遭うというのは、わからないではない。
道路整備の不充分な所では、現在でも広く見られる現象だ。
だが、線路を枕に転寝なんかするかね?
私の全くの憶測だが、この中には、我が身を賭しての列車妨害という事例が含まれているのではないだろうか。
抗議のために大衆の面前で焼身自殺するような人物が、割とよく現れる国だ、あそこは。
今は公然と日本に楯突く術はない、しかし、身体を張れば、列車の運行ぐらいは止められる、と言ういわば自爆テロのようなことだったんではないのか。
ふと、そんなことを考えたりしたのであった。




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