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April 17, 2007

小さい頃はカニカマたべて

呉服屋なんて斜陽産業だから曲がヒットするまで実は本物のカニを食べたことがないのよ。
(ニューミュージック特集第7弾)

「南洋点描」という本を買った。
古書店から送られてきた目録で見つけた。

私には、こういう趣味があるので、その何か資料にならないかと思って買ったものだ。
古書店の目録には発行年が記してあって、昭和16年となっていたので、これは期待できるかと思って購入した。

日本がいわゆる南洋群島を統治下に置いたのは、第一次世界大戦に便乗してドイツ領だったミクロネシアの各諸島を占領して以来のこと。
昭和16年ならば、すでにいくつもの神社が出来ていたはずだから、と期待したのだった。

しかし、実際に届いた本を見てみると、対象となっているのは≪南洋≫と言いつつ、実は現在のインドネシアで、しかも、著者がインドネシアに渡ったのは昭和12年のことなのであった。
つまり、インドネシアがオランダの植民地支配下にあって、日本では蘭領東インド=≪蘭印≫と呼ばれていた時代のことなのである。

もちろん、日本の委任統治領以外の太平洋・東南アジア地方のことを≪外南洋≫とも言ったので、タイトルに嘘はないのだが、つい期待してしまった分、落胆したのだった。

さて、当然と言うべきか、彼の地に設置された神社についての記述も、写真もない。

しかし、せっかく買ったのだからと、斜め読みしてみる。

この本、奥付によると、発行所が「小林清孝」と個人名で、しかも非売品となっている。
著者名は野村恵二。

著者の序文を読んで、「ん?」となる。

原稿は「南洋点描」と題して野村生命の社報に連載せるもの、及び「南洋素描」と題して野村の機関紙「倭」に掲載したものが大部分

著者が野村で野村生命?

また、序文の前にある「亡き兄に捧ぐ」という文章には

計らずも先年、野村東印度殖産会社の廿周年紀念式が蘭印各地で挙行せられるに当り、私は大阪の本部を代表して彼の地に渡り、吾々の事業地を隈なく巡視した

とある。

ちなみに「亡き兄」というのは、昭和5年に大学卒業目前で雪山で事故死したらしい。
その弟であれば、昭和12年にはまだ20代だろう。
それが会社の代表?

野村生命も野村東印度殖産会社も、戦前に存在した野村財閥に属する企業である。

前者は現在はT&Dフィナンシャル生命となっている。
後者は現在の野村貿易につながる会社と理解すればいいのであろうか。

野村財閥に属する人間で野村姓、そして、20代の若さでそれなりの社内ポジションということは、どうやら、著者は野村財閥の御曹司、少なくともその係累にあたる人物のようだ。

ようだ、というのは、ネット検索ではそこのところを確定できなかったからだが、多分間違いはないだろう。

つまりこの本は、財閥の坊ちゃん漫遊記だったのである。

その内容は、野村東印度殖産会社の経営するゴム・コーヒー・油ヤシの農園をめぐってその概要を説明した部分と、観光地や風俗の見聞を記した部分からなる。

その記述は、当時の常識に照らして、可もなく不可もないものだろう。
つまりそれは、南洋の土人を劣等人種(実際にそう書いている)として平気な感性に貫かれているということだが、それでも、幾分かは日本を相対化する視点もあり、何より文章が率直で、その点は好感が持てる。
率直過ぎて、差別的である部分もあるわけだが。

ところで、検索してみると、≪野村恵二≫の名は日本コリークラブの会長として引っ掛かってくる。
リンク先の写真の人物と、この本の写真の何ヶ所かに写っている人物(著者との明記はない)は、似ている気もするが、同一人物だろうか?

試みに国会図書館の蔵書検索で≪野村恵二≫を検索してみると、この本と、「鏡中像」という歌文集と、「陽明学研究」という本が出て来る。
詳細を見ると、3人の≪野村恵二≫は、いずれも1911年生まれで没年の記載はない(存命ということか)。
ということは、これは同じ人物ということだろうか。

いや、本当に同一人物なのかとか、こんなブログのためにわざわざ調べようとは思わないが。

しかし、もしそうだとすると、随分、著書の傾向にばらつきがある。

もっとも、会社の経営者が、東洋哲学の研究なんかをすることは、必ずしも珍しいこととは言えないだろう。
自分の経営哲学なんかと絡めてね。

趣味で作った短歌を本にするのも、経営者の道楽としては、ありがちだし。

南洋漫遊とコリーと陽明学と短歌。

お金持ち、って感じですな。

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Comments

サイトが文字化けで読めないんだけど私だけ?

Posted by: ぽのぽ | April 18, 2007 at 02:33 PM

「小さい頃はカニタマなんて」
お子ちゃまにはわかりませんよね、という流れかと思ったのに…

Posted by: router | April 22, 2007 at 12:14 AM

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